住吉区祇園車【後編】
こんにちは、グレースホームです。
今日は、豊前市住吉区の祇園車改修工事レポート後編をお伝えいたします。
1月某日。
解体した木材を運び込んだ翌日から作業は始まりました。
車輪を固定するためのつなぎ目部分や、外側を模る作業、全体のカンナ掛けを初めに行っていきます。
2025年2月24日
「浮かし彫り」の作業開始。
浮かし彫りとは、平面に彫り込んで模様を浮かび上がらせる彫刻技法で、掘る深さによって高浮き彫りや薄浮き堀りなどと呼ばれています。
浮かし彫りは2次元と3次元の中間という表現方法が難しい技法です。
特にこのような高浮き彫りは平面から大きく浮いた表現をするため、難易度が高く、職人さんの技術が問われます。
特に木材は奥深くまで掘るということができない素材であるため、限られた深さで最大限の立体感を出す必要があります。
浅い部分と深く掘った部分のバランスを考え、平面上に奥行きや躍動感を表現する。
それに加えて、失敗の許されない「一発勝負の精度」が求められるこの仕事には、高い集中力と長年の経験が必要不可欠です。
ここで職人さん達が使用している道具にも注目してみます。
浮かし彫りにおける道具は、作品の精度や美しさを表現するうえでとても重要な要素になってきます。
基本となるのは彫刻刀。
誰もが学校の授業で使ったことのある道具ですが、一言で彫刻刀と言っても様々な刃の形状があります。
広い面をならしたり、背景を平らに掘る時に使用する平刀、半円状の刃をしており、曲線や陰影の調整に適した丸刀、シャープな線や輪郭などを掘る時に使用する三角刀、掘り止まりや輪郭の切り出しに使う印刀など、どの道具を使用する際も正確な力加減とコントロールが必要です。
刃を強く押し付けると深く掘りすぎてしまい、バランスが崩れてしまいます。
反対に力が弱くてもモチーフが浮かび上がったように見えず、平坦な作品になってしまいます。
刃の動かし方、角度、素材の質感、それら全てを駆使した職人さんだけがこの作業に携わることができます。
この浮かし彫りの作業は2月下旬から4月初め(祇園祭開催の約3週間前)まで毎日続きました。
丁寧な手作業を間近で見ていると、祇園祭にかける職人さんたちの想いがひしひしと伝わってきますね。
2025年4月4日
組み上げ作業
少しの誤差や隙間もなくピタッと組み上がっていく台車。
見ているだけで気持ちが良い。
2025年4月19日
竣工式
竣工式の後は引き始め式も行われました。
今回の祇園車の基礎構造の改修は、およそ100年に1度の貴重な作業でした。
伝統ある古材を出来るだけ再利用することで、資源を大切にすることだけでなく、歴史を刻んだ素材に敬意をはらい、住吉区の祇園に対する精神的な継承を大切にしたいという思いが込められています。
繊細な浮かし彫り、そして釘をほとんど使わない木組み技術で組み上げられた土台は、これから100年先まで受け継がれていきます。
私も「この土台が再び改修される頃には自分はもうこの世にいないのか」と考えていたら、なんだかとても不思議な気持ちになりました。
そんな貴重な体験を間近で見させてもらえたことに心から感謝したいと思います。
今回の、住吉区祇園車の改修作業の様子はYouTubeでも配信しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。