間取りと家事
子どもが巣立ったあと、二階へ何をしに行く?
家を建てたのは30代のご夫婦だ。子どもと暮らすための家を考えながら、話題になったのは、その子が巣立ったあとの二階だった。「老後とか2階登りたくないな」。住まい手がルームツアーで気負わずそう話す。遠い将来のためだけの家にしたかったわけではない。案内を続けると、毎日料理をする二人の希望もずいぶん細かく聞こえてくる。

使わない部屋へ行く階段
子どもが部屋を必要とする期間より、そのあとに夫婦で住む期間のほうが長い。周囲には二階のシャッターが閉まったままの家も見かけるという。そう考えると、子どもが巣立ってからも、その部屋や収納へ階段を上がっていく暮らしが、本当に欲しいのだろうか。ご夫婦は平屋を選んだ。
延床は26坪ほど。純粋に移動するだけの廊下に広い面積を渡さず、家族が通るところに靴やコート、食材を置く場所を重ねている。来客が通る玄関には靴がほとんど見えない。帰ってきた家族は収納側から上がり、コートを置き、買い物をしまい、その先で手を洗える。老後のために階段を省いた答えが、いまの買い物帰りにも効いている。

キッチンの幅だけは惜しまなかった
面積を抑える話ばかりではない。奥さまには、キッチンの幅を広めに取りたいという希望があった。料理をしている人がいると後ろを通れない。実家や友人の家で実際に経験して、そこは譲りたくなかったという。自分たちの家を案内するときに出てくるのも、「料理しながら全然後ろも通れるんで」という、ごく普通の一言だ。
この一言を聞くと、26坪でも広いのです、と外から説明する必要がなくなる。削ったのは誰も立ち止まらない廊下で、残したのは二人が同じ時間に台所を使うための幅だった。そこに立つ人が、どこで体を引かなくて済むようになったかまで話してくれる。

二つずつ用意したもの
子ども部屋は今は一室。必要なときに二つに分けられるよう、扉、窓、照明、スイッチ、コンセントを二部屋分用意した。将来また用途が変われば、泊まりに来た人に使ってもらっても、趣味の道具を置いてもいい。今のご家族が、将来のすべての使い道を決めなくても済む用意だ。
窓際にはつくり付けのスタディカウンターがある。子どもがそこで勉強する姿を考えながら、高さは大人が使うことまで想像して決めた。撮影のとき、そこには写真立てなど家族のものが飾られていた。まだ机を使うようになる前から、その場所にはすでに家族の時間がある。その先にまた二人で座る日が来ても、ちゃんと使える高さのままで。











