間取りと家事
戸を閉めても、レンジは外に残す。
中津の海辺の家を案内していると、訪ねた人がキッチンを探し始める。さっきから、同じ部屋の中に立っているのに、どこにあるかが分からない。引き戸を開けてようやく台所が現れる。けれど、全部を戸の向こうに入れてしまったわけではない。オーブンレンジだけには、わざわざ外側に場所をつくった。

今日は台所を見たくない
動画で阿部が話しているのは、料理を休む日のことだ。台所を使わないのに、目の前にずっとキッチンが見えていなくてもいい。引き戸を閉じると箱の一面が壁のように見えて、大屋根の下にもう一つの部屋をつくった感じはしない。部屋数を増やさずに、生活の中から台所の景色だけを一時的に外せる。
この家の二つの箱は、ずれて置かれている。引き戸を閉じると箱の角が続いて見え、その脇に居場所が残る。冷蔵庫だけを隠す造作より大がかりな分、料理の場所を丸ごと休ませられる。

よく使うものだけ、例外にする
冷蔵庫にも手前に戸がある。「冷蔵庫の扉の前にもう一個扉ある感じですか」と撮影でも問い返される。面倒にならないか、という素朴な疑問は当然だ。料理の最中は手前を開けておけるし、くつろぐときには閉められる。見る人の位置だけでなく、開け閉めする時間を分けたところに、この家での使いやすさがある。
どの戸を何回動かすかを考えると、ただ家電を隠すことと、ここでの食事を楽にすることは同じではない。家族にも、何度も開けるものと、一度開ければしばらく閉めないものがある。

温めるだけの夜には
オーブンレンジを置く場所については、住まい手から希望が出ていた。食事を温めるだけの日にも、台所を使う日と同じように引き戸を開けるのか。毎日使うものを一つ外に残すと、そのひと手間が要らなくなる。部屋を片付けやすくするための戸が、かえって暮らしの小さな用事を増やすこともある。
キッチンを閉じた写真だけなら、家電が一つも見えないほうが徹底して見えるかもしれない。ここでおもしろいのは、その徹底を住まい手が望まなかったことだ。使わない日は台所を見ずに済み、温めるだけならレンジがすぐそこにある。両方をかなえるために、戸のこちら側にひとつだけ置き場が残った。










