庭と暮らし
テントを干す場所を、先に取っておく。
庭の広い家が欲しい、という希望は珍しくない。このご家族の話には、もう一段先があった。キャンプから帰ってきたとき、使ったテントを車からどこへ運ぶか。106坪の土地で家の面積を決めたのは、芝生がきれいに見える完成写真より、むしろ片付けの日のことだった。

玄関へ行かない帰り道
駐車場から見ると、植栽の間を抜けた先に玄関がある。買い物を持って帰る日なら、そちらへ上がる。ところがキャンプの帰りは、車の脇を抜けて、まっすぐ奥の庭へ行ける。湿ったテントやラグを家の中へ持ち込まず、芝生に広げて乾かせる。運ぶものが違う日に、わざわざ同じ入口を通らなくていい。
家の前にも庭はある。こちらは植物を育てる庭で、植えたときには小さかったバンクシアやニューサイランが育ってきた。奥は子どもが走ったり、ご主人がゴルフを練習したりする芝生の庭。同じ「庭」という一文字でくくるには、ずいぶん仕事の違う二つの場所だ。
小さな子どもがいると、家族そろってキャンプに出かけられる日ばかりではない。ならば、出かけられない日にも家でテントを張れたらいい。道具を片付ける庭が、ときには出かけたかった場所そのものにもなる。建物と同じくらいの広さを奥に残した理由が、そこで腑に落ちる。

靴を履いたまま、台所の人と話す
庭で食事をしている途中に、食材がもう少し要る。表へ回って靴を脱ぎ、また履いて戻るのは、そのたびとなると面倒だ。この家では、軒の下からそのままLDKの土間に入れる。家族だけなら軒の下で、大勢で集まれば芝生まで使う。客が増えたときだけ開ける特別な庭ではない。
土間の端にあるカウンターがまたおもしろい。外から靴を履いてきた人はそこに腰掛け、室内側では普通の椅子を使える。キッチンの床を一段下げたので、シンクの前に立つ人とも目線がそろう。料理している間も、庭の会話に加われる。床をずらしたわずかな違いが、輪の中に誰がいられるかを変えている。

28坪になったわけ
住まい手は独立した廊下を望まなかった。リビングから直接寝室や子ども部屋へ入り、普段は扉を開けて過ごす。個室を閉じれば一人になれるし、開けていれば家族の気配がする。広さは、使う人が実際にいる場所に渡された。
敷地いっぱいに家を建てることもできた。それでも延床は28坪。削りたくなかったものを挙げてみると、居間で過ごす広さ、軒の下でみんなが食べる場所、テントを丸ごと広げておける芝生が残る。この家を案内するのに玄関から始めると、少しだけ大事なものを見落とす。キャンプ帰りの日に限っては、家族はそこを通らない。











