店と改修
中津で新しい家を建てる人が、最初に「壊す日」の話をした
ルームツアーの聞き手が、思わず「壊す?」と聞き返します。目の前にあるのは、いま建ったばかりの家です。それでもこのオーナーさんは、初めて相談に来たときから、自分の代でこの家を片付ける日まで含めて考えてほしいと話していました。中津の商店街に建つ、18坪の住まいと小さなカフェです。

二十年、三十年先に誰がいるか
何年もつ材料か、と聞かれることはあります。今回気に掛けていたのは、仮に二十年、三十年先に取り壊すとしたら、誰がその工事と費用を引き受けるのか。ご本人が阿部に考えてほしいと伝えたのは、解体にかかる期間や環境への負荷まで含めた、家の持ち方でした。
ずっと住める家を望む人でも、最後は子どもに任せたいのか、自分で整理したいのかでは、材料の選び方が少し変わります。店を始める楽しみと、その先始末をどうつけたいかという希望。どちらも遠慮なく出してもらえたから、設計の条件になりました。

外壁を選ぶ理由に、廃材の話が入る
この平屋には黒いリシン吹き付けの外壁を採用しました。動画で阿部は、住まい手の好みとともに、解体時の廃材をなるべく抑えたいという理由を話しています。外壁を比べる場で、色、風合い、手入れに加え、取り外した後を考えた選択です。
建て替え前から敷地にあった石も、アプローチにもう一度使いました。なくなるものの量を気にすることと、いま目の前にあるものを生かすことは、この住まい手の中では一続きでした。
動画の中で阿部自身、処分量には重さも関係し、仕上げで大きな違いが出るとまでは言っていません。黒い吹き付けはオーナーさんの好みにも合いました。未来の費用を一円まで予想することより、いま分かる範囲で、その人の選びたい方向へ少しずつ寄せる判断です。

それでも今、店を開く
足元には、ご実家にあった石を使ったアプローチ。庭には移したアガベ。通りから奥へ歩くほど、終わりを心配した人が、新しい暮らしをずいぶん楽しんで考えていることが伝わります。家をどう終えるかを聞くことは、いまこの場所で何を始めたいかを聞くこととも、矛盾しません。










