光と素材
「角が綺麗に合ってるの分かります?」北九州の平屋で軒を見上げる
外壁の色でも、木の種類でもなく、阿部が見てほしいと指すのは、塗り壁の端と軒裏の木の端です。北九州の和モダンの平屋。その二本がそろっていることは、言われるまで気づきにくいかもしれません。では、そろえるにはどこから考え始めるのでしょう。

角の位置は、最後の仕上げでは動かしにくい
ルームツアーで阿部が指しているのは、塗り壁の端と軒裏に張った木の端です。二つが同じ位置に来るように、先に割り付けを考えています。壁と天井に違う材料を使っても、端が合っていると、遠くから見たときに線が落ち着きます。
入口へ向かう足元には犬走りが続きます。上にある軒と下にある線が一緒に見えてくるのは、道路に立って外観を見たときだけでなく、アプローチを歩いたときです。
軒に最後の板を張るときに、外壁の角を動かすことはできません。手前から何枚張り、最後の一枚がどんな幅で終わるか。端をそろえたいという小さな希望が、下地を組む前の割り付けまでさかのぼっていきます。外観がすっとして見えるのは、大きな形と同じくらい、こうした端の積み重ねです。

室内では、換気扇の前に同じ問いがある
キッチンでは換気扇を箱の中に納め、パントリーのラインに合わせています。使うための設備を置いたうえで、どこが家族の目に入るのかを考えたものです。合板の寸法や継ぎ目も、見える面の線に関わります。
換気扇を納めれば、手入れや交換まで消えるわけではありません。器具の納まりと必要な機能は同時に確かめます。すっきり見えることは、あとで掃除ができることと一緒に考えて、初めて暮らしに合います。
台所を案内する場面では、一枚の板の長さが約1,820ミリという話まで出てきます。換気扇の箱だけを描けば自由に見える線も、実際の板には長さがある。そこでパントリーの見付けと合わせ、板をどこで継ぐかを決めています。外壁の角でしていた話が、まるで縮尺を変えたようにキッチンにもう一度現れます。

通りから、一歩ずつ入る
正面から見た外観写真なら、屋根の輪郭にまず目が行きます。けれど住まい手が毎日見るのは、玄関に向かって歩きながら少しずつ変わる角度です。足元の犬走りと頭上の軒が一緒に視野に入る瞬間がある。あの角を見てほしい、と阿部が立ち止まるのはその途中です。










