店と改修
カフェの床に、電源を埋めた理由。
「ナカツの器」の一階で阿部が指しているのは、古い木の柱ではなく、その下の床だ。タイルには真鍮の目地が入り、その格子の中にコンセントが納まっている。上を見れば太い梁のある店で、わざわざ足元の話をするのはなぜか。ここでは開業前に、次に入る店主の机の位置まで決めつけたくなかった。

柱は残る。テーブルは動く
この建物は、マルシェなどに出店していても自分の店舗を持たない人が、初めて店を開ける場所として計画された。入る人が違えば、売るものも、必要な家具も違う。元からある柱は動かさない。一方、その間に置くテーブルまで動かせない理由はなかった。
柱が残っていれば、柱の幅を見て席をつくれる。そこへ来る人が菓子を選ぶのか、作ったものを並べるのかは開業前には分からない。将来の店主に任せる仕事を、設計した側が先回りして決めずにおく必要があった。

どこにでも置ける、を図面で試す
壁際のコンセントから電源を取れば、使える机の位置は壁の近くに寄っていく。中央に机を置くならコードを伸ばすことになり、その線が来客の足元を横切る。床の目地に位置を合わせて電源を散らせば、店主が家具の配置を変えたあとにも、机のそばから電気を取れる。「いろんなところから電源を取れる」という動画の短い説明には、この先の営業の自由が入っている。
タイルの割り付けは、後からコンセントを一つ足そうとしても簡単には動かせない。だから家具の位置を決め切らないために、床のほうは早く決める。この順番に、小さなチャレンジショップならではの事情が表れている。

初めての店主が入ったあと
最初にこの店を使ったのは、小学生のころからケーキの店を持ちたかったという人だった。撮影時には、席でお茶をする人に加えて、持ち帰りのケーキを求めて来る人もいると話している。お客様が立ち止まるところも、スタッフが商品を手渡すところも、店が始まってから初めて具体的になる。
写真では、古い柱がきちんと残っていることに目が行く。その柱の間でどれだけ家具を動かせるかまでは、写真からは伝わりにくい。残して動かさなかった柱と、後から動かせるテーブル。床の小さな電源が、二つを無理なく同じ店に置いている。










