土地と窓
北九州の家に、花火を見る部屋がひとつ
平屋を案内しているはずなのに、階段があります。上がった聞き手が、ここは何をするところですかと尋ねると、阿部は橋の見える方向を示します。関門海峡の花火を、家族で集まって見たい。北九州のこの家が、寝室も食卓も一階に置きながら、上にもう一室をつくった理由です。

先が細くなる土地を、四角に戻さない
道路側から奥へ向かって、敷地が少しすぼまっています。そこで家の形も一枚の大きな四角にそろえず、土地に沿って段々にずらしました。外から見ると閉じた面が折れ、上からは屋根が少しずつずれて続きます。
その折れが、家の中では収納に使える奥行きになります。変形した土地に建てるとき、整った四角形だけを探すと、端の形が余りものに見えます。この家では、ずれた部分にも使い道がありました。
階段を上がる前に、長い収納が見えていました。外から見て段々に折れていた壁の、その張り出しが収納になっています。変形地の敷地図だけを見ていると気になる折れ曲がりが、家の中ではものをしまえる奥行きになり、上から見ると屋根がずれていく姿になる。一つの形に三つの見え方があります。

仕事をする日にも上がれる階段
寝起きする部屋、水回り、食卓は普段の生活ができる階に取っています。上の部屋へ行くためには階段を使いますが、一日に何度も洗濯物を運び上げる階段とは役割が違います。花火の日以外も、ご主人の書斎として使えるように、上の部屋にはカウンターがあります。仕事の合間に顔を上げれば、いつもと違う高さから街を眺められます。
平屋か二階建てかと考えるとき、階段があるかないかだけで決めるより、どんな用事で何回通るのかを考えると、ご家族の希望に合った答えを見つけやすくなります。
「花火部屋ですか」と聞き手が応じるところで、それまで平面図の記号だった小部屋が、急に家族の集まる場所に見えてきます。花火は毎晩上がるわけではありません。それでも、この高さで見たいものに心当たりがあるご家族には、階段を上がる理由になります。

テラスから書斎へ
撮影では、当初は上にテラスをつくる案だったことも話しています。花火の晩に加え、普段も使える書斎へ。机を置いて仕事のできる室内になれば、年に一度の眺めを、ほかの日にも取りに行けます。庭から全部見えたなら、きっとこの部屋の形も違ったでしょう。どこに立つと何が見えるかを調べることは、土地の値段や坪数を比べるのと同じくらい、この家の大事な準備でした。











