光と素材
大屋根の天井を、暗く残す。
同じ中津の海辺の家を、昼と夜に二度案内した。昼には、大きな窓から干潟を見通せる。夜はむしろ、外から窓を見たときに室内のどこに明かりがあるかがよく分かる。大屋根の天井には、ダウンライトが一つもない。

外から見る窓と、中で見る床
夜の案内では入口のところで靴を脱ぐ。足元には玄関から続く低い明かりがある。天井から一灯だけ下がっていることに訪ねた人が気づくと、阿部は、下からの照明があるので足元はそんなに暗く感じない、と説明する。天井に灯具がいくつ見えるかと、実際に歩けるかは、別々に考えられる。
外を歩く人が目にする窓と、玄関に入って靴を脱ぐ人が目を向ける床。立つ場所で明るさの印象が変わる。足を下ろすところに光があれば、頭の上まで同じ明るさで満たす必要はない。

暗く残す面を選ぶ
上に穴をあけて、広い天井を一律に照らす案もあったはずだ。この家では、箱や壁の下から光を返し、くつろぐ場所にはFLOSの照明を下げている。屋根の勾配は外からガレージへ、そして室内の天井へと続いて見える。その大きな面を照明器具で細かく分断しないことが、昼に見える天井の形にもつながる。
夜の撮影で気づくことがひとつある。窓辺に近づけば、家の中にいる自分の姿や灯りもガラスに映る。どの面を明るくして、どの面を暗いまま残すかは、外の景色を窓越しに楽しめるかにも影響する。

海が暗くなってから
昼に海を見ていた窓は、夜になると海沿いの明かりを映す。外に立った人からは窓の上のほうの照明は見えるけれど、生活がある低いところまでは見えない。夜の撮影で確かめられるのはこの両側だ。窓のこちらでは落ち着いて過ごせて、通る人にも灯りの存在は伝わる。
夜の家を写真にすると、見えるようにするためにすべての照明をつけたくなる。けれどここで本当に見たいのは、灯りを落としたあと、まだどこを歩けて、どこに腰を下ろせるかだ。暗いまま残った天井を見上げると、その下に必要な明かりだけを置いた理由が分かる。










