土地と窓
公園の緑は、誰の席から見えるだろう。
北九州市で土地を買ったご夫婦には、小さな心配があった。敷地は116坪。家を置いたあと、土地を持て余しはしないか。阿部が外構の担当者と早くから一緒に考えたのは、それだけの庭を何で埋めるかではなかった。住まい手が踏み出す場所と、家の中から見て楽しむ場所を分けることだった。

石積みの上で庭の広さを決める
もとは駐車場として使われていた高い土地だ。友人や家族が集まる日には車を4台停めたい。犬が遊ぶ庭は、通りの視線から守りたい。道路に面した面を全部開いてしまうと、この二つがぶつかる。そこで石積みや板塀をどこまで立て、どの方向ならその向こうに緑が抜けるかを、家の配置と同時に決めた。
石積みの向こうにあるのは自分の庭だけではない。隣の公園には、敷地の外まで続く緑がある。リビングからその景色を借りられるなら、116坪全部を植木で埋めなくても、目に入る緑は豊かになる。

同じ庭でも、立つ人と座る人では違う
同じ庭に向かう大きな窓も、すべてが同じ働きをしているわけではない。真ん中の二枚は開かないガラスにして眺めを取り、左右は庭へ出られる窓にした。大勢でバーベキューをする日に出入りする人と、台所に残って料理をする人では、窓に用がある理由が違う。
もう一つ、和室には低い窓がある。立って仕事をするキッチンと、畳に座って一息つく和室では、目に入る高さが違う。大きい窓を同じ高さで並べたら、座った人からは庭のいちばん見たいところが隠れたかもしれない。

まだ植わっていない木
和室の外には、撮影の時点で木が一本。裏の庭は、これからご夫婦が自分たちで手を入れる楽しみに取っておいた。外構のすべてを先に工事してしまえば、完成の日の写真はもっと緑で埋まったかもしれない。でもその場合、住み始めてから「ここにこの木を植えよう」と考える場所もなくなってしまう。
公園の木は敷地の外にあり、自分たちで選んで植えた木ではない。それを借りて眺める席と、これから選ぶ木を低い窓越しに見る席。その両方ができたのは、ご夫婦が持て余すかもしれないと心配した土地に、最初から全部の使い道を詰めなかったからだ。











