庭と暮らし
新しい玄関へ、前の家の石を踏んでいく
大分県中津市のカフェ併用住宅で、建物の話が始まる前に、聞き手の目が足元で止まります。「この辺の歩くところも素敵ですね」。石をどこで選んだのかと思えば、建て替え前のご実家にあったもの。しかも新しいアプローチでの並べ方を考えたのは、住まい手自身でした。

古い家から持っていけるもの
建て替えを決めると、新しい家の話が一気に進みます。その前に、一度いまの庭を見て回る時間を取ると、残したいものが見つかることがあります。大きな梁や建具だけではありません。毎日またいできた石も、育っている植物も候補です。
この家ではアプローチの石を再利用し、敷地にあったアガベも移植しました。元のままの庭を残したというより、前の家で見慣れたものを、新しい暮らしに合う位置へ置き直しています。
まだ使えるものを残すとなると、梁や建具のように大きなものを思い浮かべがちです。この家で残した石は、新しい玄関に向かって踏めるもの。構造や寸法がそっくり同じでなくても、毎日自分が歩く場所のどこかに、前の家で見たものを置くことはできます。

並べ方は、住まい手の仕事
素材を残すことと、その仕上がりをすべて施工側に任せることは別の話です。店主は自分で石の並びを考えました。お客様が通って店に入る道に、自分が選んだ間合いがある。そのことも、この小さな店舗と住まいの個性になっています。
何かを再利用したいときは、解体してから探すよりも、先に写真を撮り、場所を共有しておくほうが確実です。運び出せる大きさか、どこで保管するか、使う場所の段差や水はけはどうするか。残したいという気持ちを、実際の工事の順序に落としていきます。
動画では石の話に続いて、アガベも元の敷地から移したことを紹介しています。石は地面に戻せばよくても、生きている植物には掘り上げる時期や移す場所が要ります。解体する日に初めて選ぶより、庭が元の姿をしているうちに一周して、どれを誰が残したいかを聞けるといいのです。

路地のような細い先へ
石の脇を抜けると、案内はご自宅へ向かいます。初めて来た人には路地裏のような道で、ご本人には自分で考えて置いた石の続き。新築を見た人と、以前ここで暮らした人とが、同じ足元に別のものを見ます。新しく買ってきた石で整えるだけでは生まれなかった、ここの入口の楽しさです。











