店と改修
隣の店とくっついている。中津の長屋で、断熱をどこから入れたか
カフェの一階で、壁を指して阿部が説明すると、聞き手が「これだから工事できないですね」と返します。外に回って作業する隙間がないのです。中津の商店街で空き家を改修した「ナカツの器」。新しく塗られた壁の話は、実は、壁の外に立てなかったところから始まります。

室内側から壁をつくる
一階で案内しているのは、柱の間にある塗装仕上げの壁です。外で作業することが難しいため、断熱材を内側から入れ、その上にボードを張って塗装しました。見えるのは仕上がった壁ですが、その奥には、工事の足場をどこに取れるかという判断があります。
古い一戸建てでも店舗でも、壁が隣地とどれくらい離れているかで、選べる工事は変わります。室内側から手を入れるなら、工事後の部屋の広さや窓、既存の柱との取り合いまで一緒に見ておきたいところです。
柱の間の壁を店内から仕上げると、古い柱と新しい面が隣り合います。ボードに塗装をしたのは、費用を抑えながら内側の工事を納めるためでした。客席からは古い木も塗った面も見えます。一方、店の外からどこまで手が届いたかは、仕上がった壁を眺めてもまず分かりません。

風を起こさず足元を暖める
この店では足元にパネル暖房を設けています。静かに座って過ごす店内で、風や音をどう感じるかも設備を考える理由の一つです。断熱材を入れることと、どんな暖房でどこにいる人を暖めるかは、つながっていても別の選択です。
同じ工法を別の古い家に当てはめれば、同じ温かさになるわけではありません。窓、屋根、床など、熱の出入りするところと、住んでいる人が実際に寒いと感じる場所を確かめて、工事の範囲を考えます。
足元の幅木のように見える部分が、実は暖房のパネルです。大きな暖房器具を置く台も、温風を送る吹出口も、客席の中央には要りません。座って話をしたり、菓子を食べたりする人の近くで風の音を立てずに済む。長屋に暖かさを足す仕事には、客の耳に届くものまで含まれています。

一枚の壁を、両側から見る
古い建物の内見では、立派な柱の写真こそ残っても、隣家との境の写真は撮り忘れがちです。店にしたい部屋の内側と、通りから見た隣家との並び。この二枚があると、改修の相談で「どちら側から手を入れられそうか」まで話せます。自分の目に留まった内装と、職人が実際に立てる場所。両方あって初めて工事の姿が見えてきます。










