間取りと家事
靴箱の見えない玄関と、靴のままで入れるリビング
「靴箱とかないんですよ」「ないと困りません」。26坪の平屋で交わされた短いやり取りです。もちろん、この家に靴の行き場がないわけではありません。家族が帰ってくる側へ扉を開けると、玄関の表情ががらりと変わります。もう一軒、28坪の平屋では、庭から靴のまま食卓のそばまで来られます。同じ玄関の話として、二軒を歩いてみます。

買い物袋を持って帰る日
26坪の平屋では、家族は収納のある側から家に上がります。靴とコートをしまい、食材をパントリーへ。冷蔵庫に早く入れたいものを持ったまま、コートを置きに遠くまで歩かずに済みます。お客様が通る側の玄関は、靴を並べなくてもいい場所になりました。
玄関を二つに分けたい理由を「いつもきれいに見せたい」とだけ考えると、収納量ばかりが気になります。でも、靴を置いた後でどこへ行くかまで決めると、家族が面倒に感じず使い続けられるかも確かめられます。
案内された家族用の側には、ちゃんと荷物があります。お客様から見えないように分けたから、家族の側は気を張らずに置ける。両方の玄関をいつもきれいに整えようとしたら、片付ける場所が倍になってしまいます。使い分ける意味は、むしろ片方で少し気楽になれることです。

庭から食材を取りに戻る日
28坪の平屋で靴のまま入れるのは、庭に面した土間です。外で食事をしているとき、食材を取りに戻るだけのために表の玄関へ回る必要がありません。土間のカウンターでは、庭にいた人と室内の人が目線を合わせて話せます。
一方、普段帰ってきた家族は、シューズクローゼットとパントリーがつながる側を使えます。同じ靴の動線でも、買い物の帰りと庭で過ごす途中では行き先が違う。その二つをこの家では分けています。
聞き手はカメラを持ったまま、靴で進んでよいかと確かめます。目の前にリビングがあるので、足が止まるのももっともです。ところが庭で調理する家族の立場から見ると、ここで毎回靴を脱ぐほうが不自然になる。土間をどこまで延ばすかは、休日に庭へ何を持ち出すかで決まりました。

出入り口を増やす前に
入口が多ければいつも便利になるわけではありません。どの道を毎日使い、どの道は休日だけか。玄関に必要な広さの中で、しまう場所と通る場所がぶつからないか。平面図の上に、一日の荷物を持った人を歩かせてみてください。二軒を見比べると、同じ「玄関収納」という言葉でも、解いている困り事が違うことが分かります。
今の住まいの玄関で、最後まで手に残っていたものは何でしょう。買い物袋だったか、外遊びを終えたお子さんの手だったか。帰ってきた足がどちらを向くかは、収納の名前より、そのとき持っているもののほうがよく教えてくれます。











