店と改修
カフェの二階で、靴を脱ぐ。
中津の商店街にある「ナカツの器」で階段を上がると、足元が赤いカーペットに変わる。さっきまで靴を履いてコーヒーを飲む人のそばにいたのに、二階では椅子がなくても好きなところに座れる。空き家だった一軒の建物に、なぜこんなに性格の違う二つの階をつくったのだろう。

上がってから、初めて見えるもの
訪ねた人は、二階へ続く入口をすぐには見つけられなかった。周りは収納で、上がれるところは一か所。靴を脱いでから振り返ると、下にいたときより、一階の店の様子がよく見える。実際の案内ではそこで「上は何のスペースなんですか」と尋ねる。ワークショップや打ち合わせをする場所だと分かると、曲げベニヤでつくった曲面や、どこでも腰を下ろせる床が、ようやく使う人の姿に結びつく。
板で直角に囲った区画をいくつもつくらず、曲げた板で場所をゆるく分けている。椅子を並べる席と違い、座る人の向きまで先に決めなくてよい。打ち合わせなら互いに向き合い、手を動かすなら材料を広げて囲める。

もとの柱が、いまの席の手がかりに
梁には上棟のときの記録があり、動画の中で「昭和40年3月3日」という日付が読まれている。建てた人が残した日付を、数十年後にカフェを訪ねた人が見上げて読む。天井で覆ってしまえば、このやり取りも起こらなかった。
この梁は、初めから残せると分かっていたものではない。手作業で解体し、松の太さと組み方が見えてきて、残す判断をした。完成した店のカーペットのすぐ上に、古い家の時間がまだある。

下でお客様が来たことが分かる
二階の床には、一部だけ強化ガラスが入っている。「歩けるんですか」と尋ねた人が、その上に乗ってみる。ちょうどその場で下の階にお客様が来たことにも気づく。床にガラスを入れた意味を、図面の説明より先に、人の動きが教えてくれる場面だ。
店が満席になる日もあれば、ケーキを買って帰るだけの人もいる、と撮影当時の店主は話している。その下で起きていることの全部が二階に聞こえなくても、人が来たことだけは分かる。靴を脱いで座れる自分たちの場所があり、それでも一階の店と切れてしまわない。このカーペットの心地よさには、階下に誰かがいることも含まれている。









