海を切り取る、
0LDKの平屋。
Works大分県中津市、干潟に面した海辺の土地。景色を毎日の暮らしに取り込むために、部屋という区切りをやめた平屋です。

- 所在地
- 大分県中津市
- 敷地
- 111坪
- 延床
- 33坪
- 構造
- 木造平屋・大屋根
- 耐震等級
- 3
- UA値
- 0.38 W/㎡K
- C値
- 0.1 cm²/㎡
- 住まい手
- 一人暮らし
場所
中津市の海辺、大きな干潟の前に建っています。住まい手はこの景色を毎日の暮らしに取り込みたくて、この土地を選びました。
海の前に建つ家がひとつだけ目立たないように、外観は周りの風景に馴染ませています。外壁は柔らかい印象の塗り壁で、基礎も同じ色に塗りました。潮風から基礎を守る役目も兼ねています。庭には、海に合う木を庭師と選んで植えています。

玄関がない
この家には玄関がありません。扉を開けると段差のない床がそのまま奥へ続き、靴は好きな場所で脱ぎます。
設計の初めに、住まい手に「玄関は要りますか」と尋ねました。要らない、という答えから、この入り方が決まりました。靴箱は入口の脇に置くのではなく、生活のための箱の中に収めています。



二つの箱
33坪の平屋の中に、部屋の仕切りはほとんどありません。代わりに二つの箱が置かれ、その周りが余白として残っています。
ひとつの箱にはキッチンと冷蔵庫、収納、トイレ、小さな和室。もうひとつの箱には洗面、浴室、ランドリー。生活に必要なものは箱の中に集め、周りの余白をダイニングにも、くつろぐ場所にも、寝る場所にも使います。つながっているけれど、つながっていない。この家ではそれを 0LDK と呼んでいます。

生活感をしまう
キッチンは箱の中にあり、使わない日は引き戸を閉めて壁のように見せられます。冷蔵庫も扉の奥に収め、開けたままにも、隠すこともできます。
毎日使うオーブンレンジの置き場だけは、住まい手の希望で箱の外に用意しました。エアコンと分電盤も箱の中に入れ、大屋根の下に余計なものが見えないようにしています。



灯り
天井にダウンライトはありません。大屋根の天井に穴を開けると、それがノイズになるからです。
灯りは二つだけ。天井から斜めに吊るした FLOS の照明と、箱や壁の足元に仕込んだ間接照明です。上から拡散させるのではなく、下から穏やかに照らすことで、夜は明かりを落として過ごせます。色は電球色でそろえ、キッチンにも白い光を入れていません。


洗面の鏡
洗面の壁は一面が鏡です。枠を細くし、鏡を先に入れてから周りをモルタルで仕上げることで、鏡の存在を消しました。入ると奥にもう一つ空間が続いているように見えます。
箱の仕上げはモルタルの掻き落とし。角で途切れず一周つながっているため、乾く前に一気に仕上げる必要があります。箱ひとつに左官職人が十一人、一日がかりで施工しました。


箱の上
二つの箱には、はしごで上がれます。上には床を張ってあり、六畳ほどの広さ。昼寝をしても、荷物を置いても、自由に使える場所です。
床から天井までは五メートル。箱の上に立つと、表の大きな窓の向こうに海が広がります。二つの箱は、あえて橋でつないでいません。つなぐと空間が二階建てのように分かれてしまうからです。

三角に切り取る
箱は壁と平行ではなく、少し斜めに置かれています。そのずれが、三角の隅をつくります。
一つの隅は寝る場所。リビングから気配は伝わりますが、ベッドは見えません。もう一つの隅は仕事のための場所で、四畳ほどの広さです。四角い部屋として囲わないぶん、狭さを感じさせません。


柱二本
大屋根の下の大空間を、耐震等級3で成り立たせています。そのために必要だったのが、箱のそばに立つ二本の柱です。
柱は箱と少し離して立て、地震のときにも当たらないよう隙間の寸法を決めました。断熱は UA値 0.38、気密は C値 0.1。空間の自由さと、暮らしを守る強さは別のことにせず、どちらも設計の前提にしています。

夕暮れ
外の屋根と内の天井は、同じ勾配、同じ素材でつくられています。屋根はそのまま伸びてガレージの屋根になり、内と外がひと続きに見えます。
昼は干潟の海を眺め、夜は海沿いの明かりを窓に映す。海辺の別荘のような佇まいですが、これは毎日を過ごす家です。


動画で見る
昼のルームツアー。海を切り取る暮らしと、二つの箱(42分)
夜のルームツアー。足元の灯りと、箱の上(18分)次の事例
残した柱に、まちを開く。






