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店舗・リノベーション

残した柱に、
まちを開く。

Works

中津市の旧商店街に残っていた、築60年の空き家。柱をすべて残して、まちに開く店舗と、若い店主のための場所につくり替えました。

ナカツの器の二階。赤いカーペットと螺旋階段
二階は曲面の床と赤いカーペット。靴を脱いで上がる。
所在地
大分県中津市
建物
築60年(昭和40年上棟)
敷地
38.58坪
延床
42坪
構造
木造2階建て・既存の柱を継続
用途
店舗(カフェ)・ワークショップ
仕組み
チャレンジショップ
現在
cafe patisserie 橙和
01

通り

中津市内、長屋が続く通りにあります。かつては商店街として賑わい、郊外の大型店が増えるにつれ、人通りの少ない通りになっていました。

この建物は、不動産では解体を前提にした土地として売り出されていました。人通りの多い場所を選ぶのではなく、あえてこの通りに店を開き、一階は全面をテラス窓にして通りに開いています。隣の通りも含めた活性化の動きに加わるためです。

一階の柱の列から通りを見る
一階は全面のテラス窓で、通りに開く。

解体するのではなく、読み直す。
捨てるのではなく、聴く。

02

柱を残す

元は住宅でした。入ってすぐが土間、その奥は細かく区切られた昭和の家で、増築を重ねた跡もありました。

間仕切りをすべて抜き、既存の柱だけを残して一つの空間にしています。解体は手作業で進め、柱の足元には新しい基礎をつくりました。60年この状態で建ってきたことが分かるよう、古いままの部分も隠していません。

残した柱が並ぶ一階
既存の柱は一本も抜いていない。
窓辺の柱とタイルの床
柱の足元には、新しい基礎。
03

目地と灯り

一階の床は目地をグリッドに見立て、その中にフロアコンセントを仕込んでいます。机をどこに置いても電源が取れます。

照明はフィラメントの電球色。白い光を使わず、店全体を温かい色でまとめました。冬の足元は輻射式のパネル暖房で温めます。風も音も出ないので、静かな店内に向いています。

目地の入ったタイル床と柱
目地のグリッドに合わせて、床にコンセント。

点灯するためではなく、
影を作るために灯す。

04

内側から断熱

両隣の建物と密着した、いわゆるうなぎの寝床です。外壁側から手を入れることができません。

そこで断熱は内側から足しました。断熱材の上にプラスターボードを張り、塗装で仕上げています。費用を抑えながら、冬も過ごせる店内にしています。

塗装した壁と柱
内側に断熱を足し、板を張って塗装した壁。
一階の大空間。金色の天井と柱
二階の床下は金色に塗り、柱の列を照らす。
05

松の梁

二階の梁は、解体してみるまで残せるか分かりませんでした。手作業で解体を進め、姿を現したのは今では手に入らない大きさの松の梁でした。

棟札には昭和40年3月3日の日付があります。組み方も今は行われないもので、取り除くのではなく、見せる形で残しました。同じものをつくろうとしても、材料がありません。

二階の太い梁
今では手に入らない大きさの梁。
二階の床の切れ目から見える梁
当時の組み方のまま、下からも見える。
06

二階

二階はワークショップと打ち合わせのための場所です。靴を脱いで上がり、床は全面カーペット。曲げベニヤで三か所に曲面をつくり、どこにでも座れるようにしました。

一階の天井、つまり二階の床下は、金と赤を基調にしています。梁の折れ曲がりに合わせて色を選びました。

赤いカーペットの二階と螺旋階段
靴を脱いで上がる。どこにでも座れる床。
07

ガラスの床

二階の床には強化ガラスの部分があり、上に乗ることができます。下の店から上を見上げても、上から下を覗いても、互いの気配が伝わります。

二階へ上がる扉以外の面はすべて収納です。上でスタッフが打ち合わせをしていても、店の雰囲気が崩れないようにしています。

二階から見下ろす一階
上からは、店の様子がよく見える。
ガラスの床と赤いカーペット
強化ガラスの床。上に乗れる。
08

チャレンジショップ

この建物はグレースホームが運営しています。毎年開いてきたマルシェで出会った出店者には、自分の店を持たない人が多くいました。

店を出すには大きな費用がかかります。ここは、その負担を抑えて客を獲得し、二年か三年のうちに自分の店を持つための場所です。事業計画や資金計画も一緒に考えます。一階はスケルトンに近い状態で渡し、柱を活かして壁を足すことも、自分の色を出すこともできます。

二階の広い床と手すり
店を持たない人が、まず試す場所。

地域の職人が建て直した建物が、
地域の次の担い手を育てる場所になる。

09

今、橙和

最初の店主は、小麦粉と白砂糖を使わない菓子をつくる cafe patisserie 橙和です。家具は無垢材で、柱のチェリーとオークの色に合わせました。

若い客が通りを歩き、近所の年配の人が顔を出す。解体されるはずだった建物が、通りの入口になっています。

二階の床とカーペット
最初の店主は、小学生の頃からの夢を持ってきた。
二階から見下ろす柱と床
柱の列の上に、新しい時間が重なる。

Feature

六十年の木が、
器になる日。

建物は人が入る器だ。器は料理を選ばない。器は人を選ばない。ただ、そこにあり続けることで、何かを受け取る準備をしている。

「器」という言葉は、日本語において多義的だ。食物を受け取る容れ物であり、人の能力や度量を指す比喩でもあり、何かが宿る場所の象徴でもある。

建物もまた器だ。人を受け取り、時間を受け取り、記憶を受け取る。ナカツの器という名は、その意味において過不足がない。六十年以上の時間を生き延びた木が、職人の手によって読み直され、まちのために再び立ち上がった。そこには、何かを始めようとしている人が入り、灯りが点り、通りを行く人の目に温もりが映る。

ナカツの器は、まだ完成途中だ。次に誰が入り、何を始め、どんな会話がそこで生まれるかによって、この器の物語は続いていく。

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築60年の空き家を、店舗へ。柱と梁を残した改修(24分)

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